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グローバル人材戦略 2023/9月

現地社員を活かすキャリアマネジメント(海外駐在員のためのタレントマネジメント力強化)

9月13日(水)JAC Recruitment「第7回 グローバル人材戦略セミナー」を実施いたしました。2023年は海外駐在員のためのスキル強化というテーマで実施してまいりましたが、今回は、世界的な人事コンサルティングファーム (Mercer)からゲストスピーカーとして仲島基樹様(Mercer Thailand シニアプリンシパル 兼 Mercer Asia Japanese Business Advisory 責任者)をお招きして、海外法人の現地社員のリテンションに役立つキャリアマネジメントの考え方・具体的なステップをお話頂く形式で実施しました。


今回のブログは当日のご講演を元に、企画者の立場からポイントを要約した記事となります。(※JAC Recruitment文責)


1.キャリアマネジメントとは?

かつて、日本の企業における従業員のキャリアは、会社が管理するものでした。昨今、いわゆるメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へと組織形態のトレンドが大きく変わる潮流において、個人のキャリアは自分自身で管理すべきテーマとなりつつあります。海外現地法人の現地社員においては、以前からこの考え方が当然の状況であるのが一般的でしたが、メンバーシップ型の日本本社から赴任してきた駐在員にとっては、社員がキャリアアップを口にしつつ気軽に転職をしていく感覚に対して、腹落ちが難しい状況だったかもしれません。

社員がなぜ退職するのか?報酬にまつわる要因は、もちろん主因として常に挙がってくるわけですが、それ以外の非金銭的要因も見逃せません。今の会社に居続けて良いのか?居たいと思えるのか?働き続ける中で将来への展望が見えるかどうか?現地で働く社員にとっては重要なテーマとなります。

キャリアマネジメントの定義

ビジネスパーソンとしての「将来の目指すべき姿」を定め、その目標に向かって短期的・長期的に必要なキャリア開発計画を策定し、それらを実行・管理していくこと。

キャリアマネジメントが良好に運用されている場合には、会社にとってのメリット(生産性の向上・より選ばれる企業に)と社員にとってのメリット(ノイズに振り回されることなく実質的な経験・スキルが身に着けられる)が得られることになります。

先述のとおり、特に海外法人における現地社員にとっては、キャリア開発のフィールドは、必ずしも自社内に限定されているわけではありません。社外・転職先で得られるであろう機会・経験も踏まえた目線になります。こうした背景から、優秀な社員のリテンションを鑑みた際、その個人にとって「社内のキャリア > 社外のキャリア」と思える何かが見えていることが大事になります。

キャリアの3タイプ

External Career:職務経歴書の情報として記載できるキャリア(役職・職責・資格など)
Internal Career:務めている会社の中で特に評価を受けているキャリア(専門性・優れた技能・業績など)
Inside Career:自分自身の中で成長実感が認知できるキャリア

キャリアマネジメントにおいては、ポストに限りがある環境だったり、特に目立った明らかな特殊技能がない社員に対しても、自身としての成長実感や今後の可能性にどう気づいてもらえるか?が、大切な視点となります。

キャリアの転換点(マネージャーのレベル)

マネージャーにはさまざまな階層がありますが、それら階層の転換点において、通常、前の階層とは異なる要素が求められる事になります。一見すると当たり前のようにも思えますが、「前の階層で求められた要件をクリアすれば、次の階層で活躍できる準備が整う」という認識は錯覚であり、職位の転換点においては、次の階層では全く別の素養が必要になる事をしっかりと認識する必要があります。これがキャリアマネジメントのかなめです。

・ 自分自身に対する管理者
・ 他人に対する管理者
・ 管理者に対する管理者
・ 機能部門の管理者
・ 事業部門の管理者
・ グループ全体の管理者
・ 経営全体の管理者

それでは、キャリアへの「正しい理解」を元に、現地社員が「主体性」をもってキャリアを築き上げる支援を行うためのステップはどうなるでしょうか?


2.キャリア開発・キャリア支援の進め方

キャリア開発・支援の3ステップ

1.キャリアの現在地を知る
2.将来のキャリアゴールを描く
3.キャリア開発に向けた機会を作る

ステップ1 キャリアの現在地を知る

まず今の「キャリア」を考える訳ですが、「今は担当者だからマネージャーの手前だな」という職位・職名だけで捉えてしまうのは不十分です。現状把握のための考え方として「採用面接」をイメージしてみてください。良い方を採用とする場合にどういったところをチェックしますか?業界、職種、経験してきた組織特徴、職位、経験してきた仕事の水準、経験の種類、スキル、知識、価値観など、おそらく質問されるのではないでしょうか。

そうした観点一つ一つが、キャリアを構成する要素となります。
・そのうえで、そうして分解される各種要素のうち、どういった要素が、自社内のどういった職位の人に求められるか、整理されていますか?
・たとえば「担当者」であれば、上級担当者と中級担当者、初級担当者に求められるそれぞれ異なる要素が言語されているかどうか?
・「管理職」であれば、上級、中級、初級の管理職では、組織階層上のタイトル以外にどんな要素が必要になるでしょうか?

これらの言語化・定義がキャリアの現在地把握には必要不可欠となります。

ステップ2 将来のキャリアゴールを描く

現地社員のキャリア開発を考えた際、今現在のその方に必要なスキルアップをアドバイスしがちですが、将来イメージとのつながりがないと、それだけでは、当人にとって本当に意義を感じるものになりません。

将来のゴールを描くためにはまず、【キャリアアンカー(錨)= キャリア形成を通じて得たいもの】をその方のありたい姿、生み出したい価値、リスクへの態度、周囲との関係、といった切り口から今一度思い浮かべる必要があります。自分が大切にしたい価値・思いという軸となる「錨」が定まったら、では、そのうえで将来(長期的・短期的時間軸の双方で)どうなっていきたいのかを実際に考えることができるようになるでしょう。

学習テーマは、それが整ってからになります。そこで初めて、今学ぶべきことが見えてきますし、それがどう今勤めている会社内で得られるのかのつながりが得られることになります。 ​

ステップ3 キャリア開発に向けた機会を作る

上述のステップを得て、自ら、および自社に関しての理解を深めたら、あとはチャレンジあるのみとなるわけですが、ここで、チャレンジ対象となる「仕事(もしくは意思決定)の機会」についての考え方が大切になります。「キャリア開発」と聞くと、ついつい単線的な積み上げをイメージしがちですが、仕事も人生も思った通りに行くものではありません。必要なマインドセット・スキーム例が、こちらとなります。

計画された偶発性理論
偶然の機会を大事にする。偶然得られた機会(指名されたポスト、たまたま担当することになった仕事)に、関心を持ち、楽観的に受け止め、柔軟に、積極的に、粘り強く取り組むことによって、事前想定以上のキャリアが開ける可能性があります。

キャリア開発の原則
1.キャリア機会は探すものではなく、見出すもの(すでにそこにあるかもしれない)
2.キャリアは集めるものではなく、つなげて広げるもの(一見関係なさそうな経験がつながるとオンリーワンになれるかもしれない)
3.キャリアは自然とできるものではなく、自らストーリーを紡ぐもの(誰かに規定されるのではなく、自ら解釈し意味を付与していくことができる)

キャリアの組み立て方:実際のプランニング時にはこれらを組み合わせて考えてみましょう。
1.山登り型(コツコツと意図的に)
2.波乗り型(大きな方向感を持ちつつも状況に合わせて対応)
3.出会い型(人や機会の接点・節目を大事にする)


3.現地社員のリテンションに向けてできること

さて、上述の理解を深めたうえで、現地社員のリテンションに向けてできることは何でしょうか?

リスクをとって成長機会を与えることができれば理想的です。その際、現在の組織体制を変えることなく、たとえば、任せる領域を広げたり、任せる責任を増やしたりすることができるかもしれません。また、ジョブ型が一般的な海外においては珍しい施策ですが、ジョブローテーションを他への業務支援、共同作業、兼務などのステップを通じて段階的にに実施してみるのも有効な施策となる場合があります。

そうした施策の根幹となるのが、「対話」です。成長の軌跡を可視化して、できていること、できるようになったこと、できるようになって欲しいこと、などを言語化して現地社員に気付いてもらえるよう促します。


キャリアマネジメントを進める最初の一歩として

以上、現地社員のリテンションに向けてのキャリアマネジメントの考え方・ポイントのまとめ解説となりましたが、百聞は一見に如かずの諺もあります。ぜひ一度、ご自身でご自分のキャリアについて考えることをお勧めいたします。(当日配布資料には、「体感ワーク」用のシートも添付されていました。)

ご自身についての新たな気づきが、部下へのアドバイスのクオリティを更に高めてくれるはずです。 ​

JAC Recruitmentでは、このようなウェビナーを今後も企画していく予定でいます。人材採用のお問い合わせはもちろんですが、新企画アナウンスの際にはぜひ、お気軽にお申し込みください。